あなたのそば   BYまほさん





泣かないと決めて
あなたに約束をした。
必ず守ると決意して
あなたに誓った。





あなたのそば



だから、先にはいかないで、そばに居てほしい。





1本の矢が、私に迫る。
だけど私は、全く気付いていなかった。
「先輩っ!!!」
そう呼ばれた瞬間、私は、譲君の腕の中に居た。
「・・・譲君?」
良かった。と、笑う優しい人。
背中には1本の矢が刺さり、譲君を貫いて居た。
「え・・・」
言葉が見当たらなくて、言葉が出ない。
そして、抱き締められていた譲君の力が、ゆっくりと抜けていく。
私は、倒れそうになるのを、支えていた。
「譲君っ!譲君っ、譲君っ、譲君っ!!!!」
名前を呼ぶしかできない。
それ以外言葉が、分からない。
「・・・泣かないで、くださいね。こうするしか出来なかった、俺が、悪いだけ、ですから。」
やっと触れられた温もりは、とても冷たくて、気持ちが、溢れる。
「・・・やだよ。いやだよ。譲君?」
私は、支えきれず、その場にしゃがみこんだ。
「・・・先輩、早く。」
微かな声で、譲君が言う。
「早く。立って。違う場所に。また、狙われるかもしれない。」
虚ろな眼差しで、途切れそうな息遣いで、譲君が言う。
「できないよっ!!譲君が、ここに居るから、いけないっ」
あなたの隣が、私の居場所でありたかったから。
私は、いけない。
「・・・俺を、おいて、遠くへ」
いやだ、と言おうとした瞬間、近くに居た九郎さんに腕を掴まれ、譲君と引き離された。
「弁慶っ!ここはお前たちに任せる。俺はこのまま、敵の本陣に行く。」
飛びかう矢を振り落としながら進む九郎さんに腕を引かれ、譲君との距離が開く。
「ま、待ってください。譲君が・・・!」
その言葉に強い口調で九郎さんに言い返された。
「お前は何の為にここに居る?譲は、何の為にここに居た?」
それは、勝つために。守るために。
「あいつは、お前を守るためだけに居た。あいつには、源氏だの平家だのは関係なかった。」
九郎さんの手に力が入って、私の腕を力強く握っていた。
「あいつは、なんて言った?泣くな、早く、自分をおいて行けと言ったんじゃないのか?
お前があの場にあのまま居たら、確実に殺されている。
譲の願いは、お前に自分の事を案じてもらう事じゃない。お前自身だ。」
譲君は、私を守って傷付いた。
もしかしたら、あの場所で、あんな場所で、もう手の届かない場所へと行ってしまうかもしれない。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。絶対に嫌だ。そんなの、絶対嫌だ。
「だからこそですっ!」
私は、九郎さんの手を思い切り振り払った。
そして、走っていた九郎さんが足を止めて、私を見た。

「確かに、さっきは取り乱してしまいました。だけど、私は譲君の所に戻りたい」
九郎さんを私は睨む様に真っすぐ見た。
「私は、譲君に守ってもらったんです。なら、次は私が譲君を守りたい。譲君の願いなんて知りません。それが、私の願いです。
それに、後で何度だって怒られます。生きて、また、何度だって、譲君にも、九郎さんにも・・・」
死を迎えてしまえば、またはもう二度となくなる。
怒られる事も、謝る事も、出来なくなってしまう。
この腕に、この両手に、まだ譲君の温もりが残るうちに、戻りたい。
譲君のそばに。
泣く事をやめて、悲しむ事をやめて、ただ、譲君を信じて、次は、私があなたを守る。
でも、命はかけないよ。
ずっと、一緒に居たいから、必ず、生き残る。死なせない。

「・・・分かった。では、源氏の総大将・・・いや、源九郎義経としてお前に願う。
弁慶達に加勢し、必ず譲を連れ帰れ。」
はいっ!と、返事をして、私は振り返って、譲君が居る場所へと急いだ。

泣かない。
まだ、悲しい事なんてないから。
あなたは、まだこの世界に居るから。

必ず守る。
あなたがしてくれたように。
いつか、一緒に私達の世界に帰ってからも、ずっと。

泣かない。
だからずっと、あなたのそばで、笑わせて。。。



まほさんにいただいた「譲神子」!!
まほさんの神子は男前だなぁvv
まほさんありがと〜!!!!
お礼に弁様描くからね〜!!